月曜日, 10月 12, 2009

膝の痛みと痛点ストレッチ

膝の痛みというのはいろいろ原因が考えられますが、
疲労からくる筋肉の拘縮による痛みというのはRICE処置だけではなく、
痛いところを押すことで伸ばす「痛点ストレッチ」がいいらしい。

もともと宗田先生の本は読んでいてその概念は理解していた「つもり」だったのですが、
スポーツ現場ではすっかり忘れてしまっていたかも・・・。
ということで忘れないように自分の頭を整理するつもりで書き残しておこうかなと。

RICE処置はケガの治癒促進効果を目的とするのではない



急性外傷や痛みがあると選手に訴えられると状況を確認し、RICE処置を行うように指示します。
R・・・Rest(安静)
I・・・Icing(冷却)
C・・・Compression(圧迫)
E・・・Elevation(挙上)
の頭文字をとって「RICE処置」と呼ばれているこの応急処置は、
最近ではアスリートならよく知られている言葉となりました。

ただよく質問されるのは
「どのくらいの時間行えばいいのか」
「いつから温めればいいのか」ということ。

基本的には冷たさを感じなくなる程度の時間冷やし、
ケガをしてから48時間(丸2日)をメドに今度は血流を増やすために動かして、
温めていくようにします。

ケガの初期段階で温めてしまうと、ケガをした部分の中で内出血が起こり、
正常な細胞までも痛めてしまうため、それを防ぐ意味で血流を減少させるよう
冷やす(RICE処置)のが目的です。
またケガをした部分は炎症反応が起こり、熱感、腫脹、痛み、機能不全をともなうため
出来るだけ炎症反応を抑えるという意味でも有効なのです。

ただしこれは初期段階のみ。

ケガをして損傷部位の炎症がある程度おさまってくると、
今度は血流をよくして細胞の活性化を促し、治癒させる段階へと移行します。
冷やしているだけでは組織は血流が抑えられたま酸素の供給も少なく、
何より結合組織といわれる靭帯や腱をはじめ、筋肉、関節の柔軟性が低下してしまいます。

治療院の先生などに「冷やすと筋肉が硬くなるといわれました」といってくる選手がいますが、
これは正解なんですね。
・冷やして炎症反応を抑えることを優先させるか
・動かして多少の痛みや腫れのリスクを負いつつ、治癒促進効果を期待するか
の切り替えや判断が先生方によって変わってくるということだと思います。

 痛いところは硬いところ


と前置きがチョー長くなってしまい、
「何のこと書いてたんだっけ?」と自問自答しつつ、そうそう痛点ストレッチ

機能的に問題があることを否定しなければなりませんので、
まずはスポーツ専門の整形外科を受診して、
「靭帯は切れてませんよー」とか、「半月板は大丈夫ですよー」
といったことを確認してもらう必要があります。

その上で「膝が痛い」ということであれば、
痛い部位をゆっくりと押していくわけです。
痛いところというのは「硬いところ」、
硬いところを押せば痛いけど、その分伸ばされているんだろうということになります。
これが痛点ストレッチのポイント。

痛いところが知らず知らずのうちに硬くなるというよりは、
痛くなった後に動かさなくなることによって硬くなってしまうという
原因と結果の解釈が逆転してしまうことも多いようです。
さらにストレッチを行うことで痛みの閾値(いきち:刺激による反応のこと)が上がり、
痛みを感じにくくなるとのこと。そうでしたか、これはあまり考えたことがなかったな。

宗田先生も最初のうちは痛いところに
「痛み止め」の注射などをうっていたとのことですが、
痛いところを押すことで、痛覚の麻痺が起こり、さらに硬いところがストレッチによって
動くことで痛みが軽減した患者さんをみているうちにこのストレッチの有効性を実感されたそう。

書籍によると20年間で1年以上受診した患者さんの中で
人工関節を入れるにいたった人はわずか2名。
「膝の痛みをとる名人」(患者さん談)というお話もナットクです。

 自分で出来るように指導する



スポーツメディスンの記事(113号)や書籍にも書かれていますが、
「自分で出来るように指導することが大切」。
まさに「あなたもゴッドハンド!になれる」となれば、痛くてもやってみようという思いますね
(私はあまり膝痛を経験したことがなく、試せないのが残念なのですが・・・)。

自分でできるメリットとしては、
●自分で我慢できないほど痛い部位を押す人はいない
●押すという痛みを起こす動作と痛みを感じる感覚が同時にわかる
●スポーツをしている人は「自分で何とかしよう」という思いが強い

これらをうまく活かして膝痛を改善できればいいなぁと。

実際の痛点のポイントややり方などは書籍や記事を参考にしていただくとして
(誤解があっては困るので。要望が多ければちょっと考えますが・・・)、
「痛いところ=硬いところ」ということを基準に伸ばしてみるようにします。

ただしこれは、根本的な病態そのものが治るといった性質のものではないので、
スポーツをしている選手などはそのあたりを自覚して行っていく必要があります。

膝痛4つのタイプ(書籍:痛点ストレッチより)
●0期:使いすぎによる痛み
●1期:急性炎症期
●2期:慢性炎症期
●3期:骨の痛み
の0期と2期に特に痛点ストレッチは有効であるとのこと。

この他にも脚のゆがみであるとか、肥満がもたらす膝痛とか、
面白い話がいろいろ載っているんですが、もはや書ききれないので今日はこの辺で。

◆痛点ストレッチ



◆スポーツメディスン(雑誌)参考記事は113号に掲載

水曜日, 9月 09, 2009

脳と運動のステキな関係

ひっそりした存在のこのブログですが、思いついてコソコソ更新します☆
さて今回は脳と運動の話について。

脳は消去法でしか学習しない



先日いつも楽しく読んでいる勝間和代さんのメルマガで、
脳科学者である池谷裕二さんのお話が紹介されていました。
いわく「脳は消去法でしか学習しない」ということ。

脳は「正しいことを学ぶ」のではなく「間違ったことを取り除いていく」ことで、
スキルが熟達していくそうなのです。

スポーツで考えてみると基本練習などは「繰り返し」行うことで
正しい動作が身につくようになりますが、
これは失敗を繰り返すことで「これはダメ」「これはダメ」と
消去してよりよい動きを模索していたということなんですね。

チームの中にはものすごく技術の高い選手がいるのですが、例外なく「努力家」。
全体練習が終わってからも自分の課題練習を黙々と行っています。

「天才!成功する人々の法則」という本の中にも
圧倒的な努力の目安として「一万時間」ということが書かれていましたが、
一万時間かけて失敗し、その中から「これならいいんじゃないか」というものを
選択する作業だったのですね・・・。

エジソンは「失敗したのではなく、うまくいかない方法を発見したのだ」
という言葉を残していますが、脳の消去法を見事に表現していると思いませんか。

◆天才! 成功する人々の法則



 運動をすると「頭がよくなる」


健康的な生活を送るためには「運動」が必要であるということ。
いまや常識となっていますが、運動をすることで脳が活性化され、
いわゆる「頭がよくなる」ということが指摘されています。

それは思考力であったり、アイデア発想力でもあったりするのですが、
運動をすることで体の血液循環がよくなり、脳への血流も増え、
エネルギー源(糖質)と酸素が供給されること、
またニューロンの接続を維持するタンパク質が刺激されることに要因がありそうです。

教室でじっと授業を聞いていると眠くなりますが、
散歩をしていると面白いアイデアを思いついたり、頭がすっきりすることは
何となく自分の経験でも思い当たるかも。運動にはメモ帳が必携ですね。

◆ブレイン・ルール



脳を力を100%活用する12のブレイン・ルールの第一番目に、
運動で「能力」がアップするという話が紹介されています。

 スポーツに活かす学習効果



最近「脳科学」に関する書籍がたくさん出版されています。
専門家の方が、「脳科学」の専門知識を持たない一般の人にも
わかりやすく、面白く、ためになるものを紹介しているのですが、
いろいろありすぎて、何を選んで読めばいいのか悩みますね・・・。

私の場合は、
●運動に関すること
●メンタル面の強化などに関すること
●生活に役立つ脳の活性化に関すること
などを好んで読む傾向にあるようです。

と書いておきながら、たまたま読んだ本の中にも面白いコラムがあったので、
こればっかりは本との出合いに感謝!ですね。

◆ちょっとした勉強のコツ



「思考の整理学」が23年間で100万部を突破したという外山滋比古先生の本。
スポーツ選手に関する話題とともにいろんな勉強のコツが紹介されていて、
読んだだけで頭がよくなったような気がします(笑)。

こちらにも書かれていますが、
やはり体を動かすことは学習効果にもよい影響を及ぼすのでしょう。
そしてやっぱり「思考の整理学」はできるだけ早く出合うべき本の一つ
であることは間違いないですね。

◆思考の整理学

水曜日, 1月 23, 2008

食べることへの一考察

ずいぶん放置していたこのブログですが、しぶとく書きます(笑)。
ウエイトコントロールに悩む選手によく行うアドバイスとしては、
「消費カロリーと摂取カロリーのバランス」の話。
消費カロリー>摂取カロリー=体重減、
消費カロリー<摂取カロリー=体重増。ごく簡単です・・・が。

 無意識に摂取カロリーはコントロールされることがある



普段何気なく食べている食べ物の量は「空腹だから」ではなく「環境」が左右するようです。
「家族や友人」「パッケージや皿」「ラベルや照明」「色」「形」「香り」・・・etc.
「パッケージやお皿で惑わされるほど鈍くない」とは思ってみたものの、
レストランでの食事量は出されたお皿の分、
お菓子は一袋、もしくは小分けされた袋の数、
友人と食事を楽しむときはお互いが食べている間、何かをつまんでいるとか、
考えてみるとキリがない、というか考えたくないほど。

 胃袋は数が数えられない


胃袋には3つの状態しかないという。
1)お腹がペコペコ
2)お腹がいっぱいだけど、もっと食べられる
3)お腹がパンパン

よく「デザートは別腹」といいますが、これは2の状態ですね。
ワタシももちろんいつも実践して、後でやめとけばよかったかも、と思ってしまいます。
この2の状態が「食べ物に対する無意識の幅」であり、
ここをコントロールすることが「やせたい」「太りたい」と思う人にとっての
key pointになるのかなと思います。

 無意識下を意識下へコントロールするために



立食パーティなどで食べ物を食べたお皿を片付けられると、
自分の食べた量がわからなくなり、結果としてたくさん食べ過ぎてしまうという実験報告がありました。
なるほど、まったく意識していませんでした(驚)。
食べる(食べた)量を確認するために、

●食べるものを見る(=ビジュアル化する)

というのも一つです。食事が終わるまでお皿を片付けない!
また、

●食欲をそそる食べ物(チョコレートとかちょっとしたお菓子)は「食べるという行為を不便」にする
●「ながら食べ」は食べる量に意識が向かないので、あらかじめ量を小分けにしておく
●必要量以外は友人とシェアする、もしくは思い切って捨てる
●家庭で取り分ける大皿の食事は野菜のみにする

など、いかに食事量を意識下に持ってくることがむずかしいか、
改めて考えさせられた次第です。
ということは回転寿司のお皿を残しておくのは、
食べた量(と金額・・・)が一目でわかり、意識下でのウエイトコントロールが可能ということ?
でも「やっぱ食べ過ぎたな~」ということは経験則から理解できるのですが・・・。

今度、回転寿司に行って実験してきます。

それもこれもこの本を読んだ影響。

◆そのひとクチがブタのもと



邦題はイマイチ。Mindless Eating 「無意識下の食事」といったところでしょうか?
こんなに環境に左右されていたなんて、と考えるだけで愕然とします。

また本の中にはファーストフードについても書かれているのですが、
すべてが悪いと考えるのではなく、サイズはホドホドに、ということですね。

◆スーパーサイズ・ミー(DVD)


日曜日, 6月 24, 2007

表現のイロイロ

「トレーナーになりたい」と思って専門学校の説明会に参加したときのこと。
学長の先生と面談をし、「選手のケガを治せるようになりたいです」と動機を話したのですが、
「治す」のではなくて「元のコンディションに戻すことですね」といわれました。
当時のワタシはその言葉の違いがあまり理解できなかったのを思い出します。

 「治す」って口に出していってはダメ



「治す」というのは医師が患者を「治す」ということで使われますが、
医療資格を持たないトレーナーは「治す」という表現は使えないとのこと。
鍼灸の施術を行う資格を持つ鍼灸師をはじめ、国家資格を持つ医療従事者のことを
「治療家」とも呼びますが、厳密に言えばこれも表現としては適切でない、
と医師から聞いたことがあります。

患者、選手を治すのは医師、施術する人は施術家とのこと。

表現一つ取ってみても意外にややこしいトレーナー。
この区別がはっきりしていないとトラブルの原因となることもあります。

 PNFは理学療法の言葉



PNFとはproprioceptive neuromuscular facilitation(固有受容性神経筋促通法)の略で
理学療法の一つの手技として1950年代ごろに確立されたものです。
手技そのものは理学療法士だけではなく、その方法や効果を熟知し、経験を重ねたものであれば
行うことは可能です。
ただ厳密に言えば同じ手技を行っていても「PNF」という表現はトレーナー全般に使用するには
ふさわしくないということがいえます。

こういったことをふまえ、日本体育協会AT養成講習では同じPNF的手技のことを
徒手抵抗トレーニング、徒手抵抗ストレッチと表現しています。

実際には同じものなのですが・・・。

他にも「マッサージを行う」というのは按摩師の資格を持つものでなければいけない、とか
マッサージという表現が出来ないのなら「筋肉をほぐす」というのならいいのか、とか。
資格保持者の権限を守るためにいろんな制約があるのも事実です。

専門学校に入学したてのワタシのように、トレーナーを目指す段階の学生さんは、
とかくこういった表現について無頓着すぎるかもしれません。

まぁでもこれは学生さんが悪いのではなくてそういったことを教えてくれる人がいないことが原因ですね。
ワタシも現場に出ていろんな人と話をする中で学んできました。

特に医療資格を持たずに活動するトレーナーにとっては資格保持者の権限を侵害しない、
なおかつ現場で行うトレーナー活動についてきちんと説明できる言語力(というのか?)
を身につけること、出来ることと出来ないことの区別をしっかりすることなどが必要だと感じています。

火曜日, 6月 05, 2007

手元に置いておきたい専門書

トレーナーとして活動するときは知識と経験のバランスが大切です。
でもまったく何の知識もなしに活動を始めるよりは土台作りとしての参考図書が必要です。

 このサイトで人気のある本ベスト3



たまたま売上データを眺めていたところ、同じ本がたくさん購入されていることが判明。
それも時期を問わずコンスタントに購入されています。
その書籍リストを見て納得。どれも基本的でありながらも学ぶべきところがたくさんある良書です。
ワタシからもオススメということでご紹介したいと思います。

◆3位 「ストレッチング」

ストレッチの基本知識とそれぞれの状況に応じたストレッチ方法が図解でよくわかります。
講習会などで資料を作成するときは必ずチェックしています。

◆2位 「身体運動の機能解剖」

筋肉の起始、停止からその動きや神経支配まで広くサポートしています。
この一冊で基本的な身体の動きに関する知識が得られ、トレーナーの奥深さを感じさせられます。

◆1位 「目でみる動きの解剖学」

目でみるといっているとおり視覚的に理解しやすく、バイオメカニクス、解剖学といったところの基本をおさえてあります。
トレーニングを考えるうえでも非常に参考になります。
ダントツ№1の人気書籍です。

木曜日, 5月 31, 2007

トレーナーに必要な資格

ブロガーは定着するまでに平均5個程度のブログを作っては削除、するそうですが
サイトを運営してからいろいろ受ける質問や、雑感などをまとめていこうと思っています。
サイトのコンテンツにしてもいいのですが、大きくなると更新するのに作業時間がかかります。ブログの比じゃありません。
ということで前置きはこのあたりで、本題に入りましょう。

 トレーナーを目指すのですが必要な資格を教えてください



という質問は今までにもいろいろといただきました。

ワタシの場合、衝撃的な(ワタシにとっては)事件がありました。
お世話になっている先生に
「トレーニングコーチというよりはアスレティックトレーナーとして活動したい」ということを話したところ、
「トレーナーとして活動するなら、鍼灸師の資格を取りに専門学校に行きなさい」と言われました。
「・・・鍼灸師?」
社会人として企業に勤め、トレーナーとしては超スロースターターだったワタシは愕然としました。
鍼灸師の資格を取るためには専門学校で3年勉強し、その後国家資格受験を経て資格を取るのが一般的です。
時間もかかりますが費用もかかります。そんな時間も費用も余裕がありません。

 なぜ資格が必要なのか



アドバイスをいただいた先生がたまたま陸上競技出身でした。
競技によって活動するトレーナーのスタイルがかなり違っているというのも後から知ったことなのですが、
陸上競技に関しては鍼灸師の資格をもった方がトレーナーとして治療(施術)をしている場合が多いようです。
プロ野球などに関してもトレーナーとして仕事をするためには、鍼灸師の資格を持っていることが前提条件でしたが、
最近では理学療法士、ATC、コンディショニングコーチなどトレーナー業務の分業化もすすんできました。

「トレーナーをするために必要な資格」を探すのではなく、
「どんなトレーナー活動をしたいから、どのような資格が必要なのか」ということ。
資格はゴールではありません。トレーナー活動を行ううえでのスタートです。

こういった視点で物事を考えるということはトレーナーのみならず、いろんな仕事をする上で必要な考え方ではないでしょうか?

資格については折に触れて考えてみたいと思います。

◆関連ページ
フィールドの選択
フィールドの選択(アスレティックトレーナー、メディカルトレーナー)
フィールドの選択(治療をするトレーナー、フィットネストレーナー、ストレングストレーナー)